まえがき

このブログ記事はKosen Advent Calendar 2013の12日目の記事です。前日の記事の担当はしょぼんさんの「英語とのつき合い方」でした。

クリスマスまでちょうど12日、そして約分すると元旦(?)という今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。年末の計画を考えている人、今年もぼっちクリスマスだと頭を抱えている人、いろいろな思いが交錯する時期ではありますが、KACの中日のひと時、私の記事にお付き合いいただければと存じます。

自己紹介

私は昨年度(2013年3月)、今の仙台高専広瀬キャンパス(入学時は仙台電波高専)情報工学科を卒業し、4月から豊橋技科大の情報・知能工学課程に在籍しています。

高専時代は高専ロボコン出場ロボットを無線LANで操縦するシステムを作ったり(外部リンク)、また組み込みとネットワークの融合を目指して、学内の消費電力をマイコンからツイートするシステム(外部リンク、動作停止中…)や、C言語でTwitterAPIを使うためのライブラリ「Twitter4C(厳密にはただのラッパ関数ですが)」を作成・公開したりしていました。

また高専カンファレンスには2回(036sendai038tokyo)参加し、036sendaiでは初参加にして副実行委員長だったりしました。KACには、前身であるKosenconf Advent Calendarを含めると2回、参加させて頂きました。

思うこと、言いたいこと

さて、高専を離れて一つレイヤの異なる、とはいっても全国から高専生があつまる学校に身を置いたわけですが、そんな中で生活を送る中で思ったことや考えたことがいくつかありました。

このAdvent Calendarでも諸先輩方が触れられているテーマと重複する部分も多々ありますが、今日はそんなことを過去の自分、そして今高専(に限らず)在学している方にアドバイス…といえるほど高尚なものではないですが、この場を借りて書いていきたいと思います。

かなり抽象的な話が多いのと、分野や専攻なんかによっていろいろと異なる意見もあるかとは思いますが、一意見としてご覧いただければ幸いです。また私自身も考えが甘いところがありますので、ぜひぜひツッコミを入れていって頂ければ、と思います。

英語に拒否反応を持たない!

「高専生は英語が苦手」という蓋し文句は私が在学中から聞かれましたが、いつの時代もそうだったのでしょうか。私は「みんな苦手なら自分が苦手でも問題ない」と思う風潮がこの蓋し文句によって蔓延してしまったように思います。

りちゃさんの記事や、昨日のしょぼんさんの記事でも触れられているので今更英語の大切さだとか、そういったものの解説はいらないと思いますが、英語は本当に重要です。中国語より話している人は少ないかもしれませんが、公用語としている国は世界一です。それ以前に、理工系であれば海外の技術や論文はまず英語でリリースされています。ネットワークプロトコルのRFCも英語ですし、海外製マイコンの規格書も英語です。最低でもこれらが読めて(フィーリングだけでも)理解できる程度の力は学生のうちにつけておくべきスキル…と、言われていると思いますし、私もそう考えています。

英語が嫌いで高専に来た、という話を聞いたことがあります。私のいる大学の3年生は英語が必修なのですが、a~iのクラス分け(aが大体TOEIC500以上、b-dが450前後…といった感じのクラス分け)で、だいたい真ん中から下のクラスに人口が比較的多いように感じられます。クラス分けの紙を見た時、やはり高専生は英語が苦手なんだなと感じました。

アドバイスとしては、やはり先入観を持たずに授業をちゃんと受けて勉強することと、TOEICなどの対策は今のスコアよりも1~2段階高めのもの(450点なら600とか730点攻略)も使って行うことが大事だと思います。またスコアにある程度自信がある人も勉強を怠らないことが大事です(自戒)。

個人的なおすすめ英語学習法(?)ですが、ちょっと興味のあるジャパンタイムズの記事を読んでみるとか(ブラウザに選択したキーワードを調べてくれるプラグインを入れておくと良いです)、手持ちのガジェットの言語設定を英語にする、海外のニュース番組を見る(スラングが多かったりスピードが早いので慣れるまで大変ですが)、といった方法もあります。技術系サイト(GIZMODOとかEngadget)の日本語版で面白いのを見つけて、それの英語版と対比して読むのも面白いかもしれませんね。

他にも多読、四方読み、ホームステイ、弾丸旅行(?)などなどいろいろな方法があるので、すこーしずつ、勉強していると思わない(気負わない)程度に慣れ親しんでいくとよいと思います。

やりたいことは、とにかくやってみよう

私が昔書いていたブログ記事でも触れていますが、高専って大学とかと比べて格段に技術と触れ合える機会が多いと思います。これは大学に来てから特に感じました。最終的には仲の良い先生がいるとか、クラブに所属しているとかってことも絡むかもしれませんが、大学は人が多いし、いろんな大人の事情も絡みます。高専にいた頃はちょっと先生に声をかければ施設とか設備が比較的簡単に借りれたりしましたが、大学ではなかなかそうはいかないのが現実です。

そこで、やっぱり今いる環境を最大限に活用して、やりたいと思ったことをとにかくやってみるのが一番よいと思います。授業で「やらされる」より、自分で考えて「やる」ほうが、得られる経験ややる気が全然違うというのは誰しも知っていることと思いますが、その通りです。そうした経験を通して、自分の適性や弱点が分かってきたり、チームの場合はマネジメントの仕方や個々人の能力の見極め方が分かってきたりします。

私も学校からサポートを受けていろいろと開発していましたが、その経験は大学に入ってからもとても役に立っていますし、これから先の礎となっていくと思います。やりたいことがあるなら、仲がいい先生や担任、その分野の先生を味方につけて、あるいは独力で、拙くてもなんでもやってみることをおすすめします。

やりたいことをやるために必要なことは、ひととおり知っておこう

たとえばあなたが家庭菜園をやっているとします。菜園の温度や作物の生育具合を管理したいと思ったとき、どのような方法でそれを実現するでしょうか。温度計の目盛を紙に記録する、紙ではなくExcelに打ち込んでグラフも作る、あるいはArduinoとかで温度センサとZigBeeでセンサネットワークを作って記録する、もっと発展してセンサのデータをクラウド上に集約してリアルタイムに情報をあつめてPCで見る…いろんなアプローチがあると思います。

例えば最後者を選んだとして、必要とした機能を実現するために必要なノウハウは、必ずしも今の自分が持ち合わせているものとは限りません。センサネットワークを構築する方法は知ってるけど、それをWebで見るために必要なサーバ運用やその上で動かすアプリケーション開発は分からない…SaaS、VPS、RoRってなに…ということだってあるわけです。

この時、できれば実現に必要なことはできるだけ自分で出来るようになるとよいと思います。一番の理由は「達成感」ですが、それだけではなく、あらゆる分野について最低限の知識は頭に入れておいて損をすることはないからです。

世の中の多くの会社はある分野に特化した技術を提供しています。しかし、それだけでは問題を解決できない時、他の会社と手を組んだり、あるいは開発を委託するという方法がとられます。そんな時に完全に任せっぱなしにしておくのは得策とは言えません。任せる側もある程度知識を持っておくことで、任される側も「何がしたいのか、このケースでのベストな選択はなにか」を提供でき、結果的にベストなプロダクトが出来上がります。

「人に頼む」のも確かにスキルのうちです(人脈を作るのもその人のスキルの一つですので)。しかし、「これを使ってこーゆー問題を解決するには?こういうことはできる?これとか使える?」という問いかけができないと、頼んでたものが思ったのと違うという問題(こういうことはうんざりするほど頻繁に起こります)が起きた時に無用な時間を費やすことになるので、ある程度は自分で解決するために必要な技術は勉強すべきだと考えます。

ただし、すべてを一人で抱えるのは大変ですし、あるいは先に挙げたような問題がトラウマで疑心暗鬼になってしまって「自分でやったほうが早い病(っていうタイトルのもあるそうです。まだ読んでないですが)」にかかるのはよくありません。あくまで必要そうな技術に関する知識を持っておき、専門の人と議論できるようにすのが得策だ、というのがこのセクションの趣旨です。

議論する力をつけよう

私は大学の寮に住んでいるのですが、時々同じ寮生の友達と部屋で酒を飲みながらいろいろな話をしたりしています。音楽や最新技術の話から、時には進路や社会問題についても話題に上がり、22時くらいから飲み始めたのに気づいたら朝の6時だった…なんてことがザラに起こります。まあ週末にやってるので、講義に影響したりはしないんですが。笑

先日、ノーベル物理学賞を受賞された益川敏英先生の講演会が大学であったのですが、その中で「自分と同じくらいのレベルの人と議論をすること」が自身の成長にとても大切だとおっしゃっているところがあり、私の中で特に印象に残りました。

甲乙を付けずにあらゆる話題についてそれぞれの意見を踏まえて議論していくと、おのずと最適解が出てきたり、さまざまな問題が整理されて見通しを立てることができるようになります。忙しい社会人になってからよりも、学生のうちにこのスキルを身につけておいたほうが良いのかもしれません。

コケることを怖がらない

これも益川先生が仰っていたことであり、私が技術者として尊敬する人の一人であるホンダの親父さん(本田宗一郎)も言っていたことですが、失敗することを怖がってはいけないと思います。私もモノを作っていく中で今でもトラウマになるような失敗をいくつかしました。それでも、その経験は後のモノづくりや組織の動かし方、人との付き合い方に活きています。

どんな失敗をしても、リカバリーできないほどの失敗はあまりありません(社会的な話は、また別ですが)。裏を返せば、失敗しないで常に成功するということは、ほとんどと言っていいほどありません。

ならば、失敗を最小にする努力をしつつ、あらゆることに取り組んでいったほうが絶対に得だと私は考えます。もちろん失敗を小さくすると一言で言う側でその難しさは理解しているつもりですが、失敗も経験のうちで「次からはこうしよう」と考えてチャレンジしていくことが、常に前を向いて進化していくということだと思います。

コミュニティに参加してみる

私が中学にいた頃、技術について話ができたのは父くらいしかいませんでした。高専に入ってようやく同じ分野に興味を持つ友達ができ、同時に高専カンファレンスなどに参加するようになって全国の高専生や様々な場所で活躍されている先輩方と知り合うことができるようになりました。そこで「プロ高専生仕分けの人(当時)だー!」とか、「Twitter4Cすごいっすね!」とか声をかけられると、思わず顔がほころんだものです。

これもまた昔のブログ記事の焼き直しですが、高専1校で友達を作ろうとすると、同じ学年なら150人とか、全校でもその5倍の人がいるわけで。でもふっと目を向けると、高専全体は50何校とあるわけですから、それこそ万人規模で人がいるわけです。もちろんただ人数だけで比較すれば高校とか大学のほうが多いのは当たり前ですが、同年代で似たような専門、趣味、興味をもつ者が集まるコミュニティとしては、高専が一番なのではないかと思ったりします。

とりわけ高専カンファレンスは近隣の、時には全国の高専生と触れ合うことができる貴重な場であり、さまざまな高専生の発表による(フランクな)学術的側面もさることながら、その場にいる他高専の学生やOB等との関係を構築する場としての側面も担っているわけです。

高専カンファレンスに限らず、あらゆる興味のあるコミュニティに参加してその分野に関する知識を仕入れることは自分の見識を広げる絶好の機会です。そしてさらにコミュニティにいる人とつながりを持つことで、単なる友達としての付き合いに留まらずプロジェクトや仕事を共にしたり、生涯にわたってお付き合いする関係が生まれるかもしれません。

ちょっと熱めの風呂に入れ

この時期は寒いのでちょっと熱めの風呂に入ったほうが血行がよくn…という話ではないです。自分のいる環境の話です。

あなたがいる今の環境は、満足のいくところでしょうか。居心地の良い場所でしょうか。もし長くその場所にいて、かつ成長を望むのならば、その環境を出るタイミングを検討してみてもよいのではないでしょうか。

私にとって高専は比較的居心地のいい場所でした。実家から学校まで歩いて5分という地理的な面を抜きにしても、専門が勉強できて好きなことができて友達や先生ともまずまずな関係を築けていたので、4年の段階でも専攻科進学という考えはありました。

しかし、同じ場所に5年間いて、さらに2年間いるということを考えた時、今置かれている環境はぬるま湯になってしまうのではないかという思いもありました。もっとも、今いる大学にしても高専生が多くいるという意味ではあまり代わり映えのしない環境かもしれませんが、少なくとも5年間身を置いてきた環境とはまた違うところで、更に親元から離れることでまた違った見識が得られるのではないかと思い、私は専攻科ではなく大学編入という道を選びました。

ここで言いたいのは、ほどよく刺激のある場所にいることが何かを学んだり、身につけたりする上で重要であるということです。遊具が変わらない公園で遊び続けるのは飽きるし、単調な作業を来る日も来る日も続けているといつか心を病むように、変化がないことは自分にとっていい影響を与えないと考えます。辛い場所にいる必要はありませんが、もし先のような状況におかれているのならば、タイミングを見計らって別の環境に身をおくことを考えるのも、悪い選択ではないと思います。

さいごに

少々長く書きすぎてしまいました。ライフハッカーに出てくるような記事を書けるようになりたいと思っていましたが、なかなかうまい単語や文の構成は難しいものですね。あとなんか全体的に意識高い系(笑)な感じになってしまった感が…。こういう時にうまい形で外に向けて自分がやってきたことを説明できるようになるスキルを身につけたほうがいいですよー、という例にでもなればいいかな。

そして最後に、これは言っておきたいんですが

感謝を忘れない

これは音量80で言いたいですね。両親とか身近な人にはもちろん日常的にお世話になっていることですし、そういった方々に感謝の意を示すことはもちろん大切です。ただ、ここで言いたいのは「技術(者)」に対して、です。

私は(一応)工学畑の人間ですが、たとえばWebアプリを1つ作るにしても、言語やフレームワークを開発した人や公開するためのサーバを運用している人、各種機器を作っている人、開発した人、そしてその動作原理の礎を築いた学者さんがいらっしゃるわけです。もちろん機器を開発した人もユーザがいなければそれを作ることができませんし、学者さんだってそれを使ってくれる分野がなければいくら研究したって無駄になってしまいます。

このように、あらゆるレイヤを支えてくれている人がいるから、今の自分がいるということを忘れず、感謝することを忘れないでほしいと思います。 この記事の中でRubyの開発者であるまつもとゆきひろさんが「隣にいる人をほめましょう、エンジニアを大切にしましょう」とおっしゃっているように、(エンジニアに限らず)褒めたり感謝されることが嫌な人はいないわけで、こういう風潮が広がって産業全体を明るくできる人に私はなりたいし、なってほしいなと思います。

このページを公開しているVPSは最初の1年間はさくらインターネットさんの厚意で高専生が無料で使用できるようにしてくださったものであり、さらにじゅーんさんが今年もこの企画をしてくださらなければ、こうして記事を書くこともなかったと思います。

こうした場を(物理的にも、環境的にも)提供していただいた方々、そしてこの記事を読んでくださった皆さんに感謝の意を表しつつ、バトンをtnkkyさんに渡したいと思います。ありがとうございました。